文字起こしあり
2024.4.02
今回のエピソードは、私のルポルタージュです。 「ドキュメンタリーは嘘をつく」という言葉、作品があります。「A」「A2」などでオウム真理教の内部に密着したドキュメンタリー映画を撮った森達也さんが残した言葉ですが、 《事実の客観的記録である、とされる「ドキュメンタリー」も、撮る側の主観や作為から逃れることができない》といった主旨で捉えられていることが多いです。 自分は物心ついた時から、この世界に、社会にお邪魔させていただいている、と言った感覚でずっと生きている部分があります。自分自身の立ち位置、存在を全肯定することは難しいし、たまたま生まれ落ちてしまった人間というかたち、社会に擬態している、というような感覚です。だから、生きていくためにひとを、かたちを、関わりを凝視し、真似しているところがあると思っています。 短い人生の経験から、ある種潜入したスパイのような自分のあり方は、暴力性を帯びていると自覚していますが、これはまた、濃密な人間同士のコミュニケーションの中では非常にバレやすく、バレてしまった段階で人を傷つけてしまうと思っています。 だからこそ、他人にカメラを向ける時、また、撮り終わったカメラに合わせてナレーターとして振る舞う時は、自分が見たままの素朴で無自覚な幻想を語り、誠実でありたい、と思っています。 しかし、どうしても観る側、聞く側の魂を鷲づかみにしたいという欲望には抗えない。ここには非常に自己本位な暴力性が潜んでいます。実際に自身が観る側、聞く側である時、そこに作為やつくりが透けてみえる時、「何をやってもいいのか」という憤りを覚えることもしばしばあります。 それでも、「面白いこと」「誠実であること」「事実であること」「消費していること」すべてに向き合うことがいまの私にとって、一番の方法であると祈って、本エピソードを配信します。(シャーク鮫くん) ◇参考図書 荻上チキ 『彼女たちの売春』 (新潮社:17、単行本…12) 森達也 『ドキュメンタリーは嘘をつく』 (草思社:05) 《#kokosuna掲示板》 「三十日間の新聞」 https://note.com/lnt91/n/nc592a8854262 『心の砂地#』も参加しました! (2024年3月28日収録) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 番組アカウント: https://twitter.com/kokosuna 感想など、投稿していただける場合のハッシュタグは#kokosuna でお願いします! ここすなリンク集→ https://lit.link/kokosuna 番組感想、お便りは kokoronosuna@gmail.com もしくは以下のフォームまで! https://forms.gle/9npfECP8TPzag1jF7 artwork: セキヤ@sekiyanabemotsu op theme: @k5_y4 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『セックスと嘘とビデオテープ』。当時26歳のスティーヴン・ソダーバーグは本作でカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を受賞。 とにかく!「雨が降ってきそうだ」「もう降っているよ」……というラストのドライさに、映画を見始めた青年だった私はノックアウトされたのでした。(そして、その後のソダーバーグの歩みにまた、心を踊らせるのですが)